はじめてのデザイン思考ワークショップ 費用・コストの見積もり方と抑えるポイント
はじめてのデザイン思考ワークショップ 費用・コストの見積もり方と抑えるポイント
デザイン思考ワークショップを自身のサービスとして提供される際、企画設計やファシリテーションのスキルと同様に重要となるのが、実施にかかる費用やコストの管理です。特にフリーランスとして活動される場合、これらのコストを正確に見積もり、適切に価格設定に反映させることが、事業の持続可能性に直結します。
この記事では、デザイン思考ワークショップを実施する上で発生しうる様々な費用・コストの種類を整理し、その具体的な見積もり方法、そしてコストを抑えるための実践的なポイントについて解説します。
ワークショップ実施にかかる費用・コストの種類
デザイン思考ワークショップの実施には、企画段階から終了後まで、様々なコストが発生します。これらを漏れなく把握することが、正確な見積もりの第一歩となります。主なコストの種類を以下に示します。
1. 直接コスト
ワークショップの実施そのものに直接かかる費用です。
- 会場費: 外部の貸会議室やイベントスペースなどを利用する場合の費用。オンラインの場合は発生しませんが、サテライト会場などを設ける場合は考慮が必要です。
- ツール・資材費: ポストイット、模造紙、ペン、画用紙、付箋、ホワイトボードシート、プロトタイプ作成用の材料(段ボール、ハサミ、テープなど)といった消耗品や、ファシリテーションツール(タイマー、BGM用の機器など)の購入・レンタル費用。
- 印刷費・配布資料作成費: ワークシート、参加者への事前資料、アンケート用紙などの印刷費用。
- 外部委託費: グラフィックレコーダー、写真・動画撮影、アシスタントファシリテーターなどを依頼する場合の費用。
- 飲食費: 参加者向けに飲食物を提供する場合の費用。
- 交通費・宿泊費: 開催場所への移動にかかる費用、遠方の場合の宿泊費。
2. 間接コスト
ワークショップの準備や実施に関連して発生する見えにくいコストです。
- 企画・設計・準備時間: ワークショップの内容設計、資料作成、資材準備、クライアントとの打ち合わせなどにかかる自身の時間に対するコスト。フリーランスの場合は自身の時給換算などが目安となります。
- 通信費: 事前打ち合わせやオンラインワークショップ実施にかかるインターネット通信費用。
- ツール利用料: 有料のオンラインワークショップツール(Zoom、Miro、Muralなど)の利用料、アンケートツールなどの費用。
- 情報収集・学習コスト: 最新のデザイン思考メソッドやツールの学習、関連書籍の購入費用など、自身のスキルアップにかかる費用の一部。
3. オンライン実施特有のコスト
オンラインでの実施には、対面式とは異なる、あるいはより重要になるコストがあります。
- 有料オンラインツール利用料: 上記間接コストにも含みますが、特に高機能なブレイクアウトルーム機能や共同作業ボードツールなどは有料プランが必要なケースが多いです。
- 高速・安定したインターネット回線: ワークショップを円滑に進めるために必須です。契約プランの見直しなどが必要になる場合があります。
- 機材費: 高品質なウェブカメラ、マイク、照明機材など、参加者の体験を向上させるための投資。
ワークショップコストの見積もり方
コストの種類を把握したら、次に具体的な金額を見積もります。
- 項目ごとの洗い出し: 企画しているワークショップの規模(参加人数、時間、日数)、実施形式(対面、オンライン、ハイブリッド)、内容(使用するツールやアクティビティ)に基づき、発生しうるコスト項目をリストアップします。
- 過去事例や調査に基づく概算: 会場費、資材費、印刷費などは、過去の経験やインターネットでの調査、業者への問い合わせなどに基づいて具体的な金額を算出します。オンラインツールの利用料は各サービスの料金プランを確認します。
- 自身の準備時間の見積もり: 企画設計、資料作成、クライアント対応などにかかるであろう総時間を見積もり、自身の目標時給や日当を基にコスト換算します。
- 合計コストの算出: 洗い出した各コスト項目の合計額を算出します。
- バッファの設定: 予期せぬ資材の追加購入や、準備時間の増加などに備え、合計コストの10〜20%程度のバッファを設定することを推奨します。
見積もりチェックリスト(例)
- 会場費(対面の場合)
- 資材費(ポストイット、模造紙、ペン、プロトタイプ材など)
- 印刷費(ワークシート、資料など)
- オンラインツール利用料
- 外部委託費(アシスタント、グラフィックレコーダーなど)
- 交通費・宿泊費
- 飲食費
- 自身の準備時間換算コスト
- (その他、固有の費用があれば追加)
- 合計コスト
- バッファ(10〜20%)
- 最終見積もりコスト
コストを抑える実践的なポイント
コストを適切に見積もると同時に、無駄を省き、効率的にワークショップを実施するためのコスト削減策も検討しましょう。
- 資材の工夫:
- 消耗品は計画的に購入し、無駄な在庫を抱えないようにします。
- 繰り返し使えるツール(例: ホワイトボード、デジタルホワイトボードツール)を導入します。
- プロトタイプ材料は、参加者が身近にあるもので代替できるような指示にする、あるいは安価な素材(段ボール、紙コップ、割り箸など)をメインに使用します。
- ツールの選択:
- 無料または比較的安価で利用できるオンラインツールやアプリケーションがないか検討します。機能とコストのバランスを見極めることが重要です。
- 必要に応じて、ツールではなくアナログな手法や、他のツールの代替機能で対応できないか考えます。
- 会場の選択:
- 対面の場合、クライアント先の会議室を利用できれば会場費はゼロになります。
- 公共の施設やレンタルスペースなど、コスト効率の良い場所を探します。
- オンライン形式にすることで、会場費や参加者の交通費・宿泊費を削減できます。
- 準備の効率化:
- 汎用的に使用できるワークシートや資料テンプレートを作成しておき、ワークショップごとにカスタマイズすることで、準備時間を短縮します。
- オンラインツールを活用して、資材準備や配布の手間を減らします。
- サービスのモジュール化:
- ワークショップ内容をモジュール化しておき、クライアントのニーズに合わせて組み合わせることで、ゼロから設計する時間コストを削減します。
コスト管理と価格設定への反映
見積もったコストは、提供するサービスの価格設定の重要な根拠となります。コストに加えて、自身の提供価値(専門性、経験、ワークショップによる成果)、ターゲット市場、競合の価格などを考慮して最終的な料金を決定します。
コストを正確に把握することは、赤字を防ぎ、適切な利益を確保するために不可欠です。また、クライアントに対して見積もりを提示する際に、コストの内訳を透明性をもって説明できれば、信頼獲得にもつながる場合があります。
まとめ
デザイン思考ワークショップの実施は、単にプログラムを進行するだけでなく、それに伴う様々な費用・コストの管理も含まれます。特にフリーランスとして活動される方は、これらのコストを正確に見積もり、効率化を図ることが、サービスの品質維持と事業の成功の基盤となります。
ワークショップの種類や規模によって発生するコストは異なります。今回ご紹介したコストの種類や見積もり方を参考に、ご自身のワークショップで何にどれだけコストがかかるのかを具体的に洗い出してみてください。そして、コスト削減のポイントも踏まえながら、提供するサービス全体の設計を検討されていくことをお勧めいたします。コスト管理の精度を高めることは、より自信をもってサービスを提供することにもつながるでしょう。