はじめてのデザイン思考ワークショップ

はじめてのデザイン思考ワークショップ 模造紙・ポストイット・図解を価値ある成果物にするデジタル化・整理術

Tags: デザイン思考ワークショップ, 成果物, デジタル化, 整理術, ファシリテーション, ワークショップ準備

はじめに:アナログなアウトプットを価値ある資産へ

デザイン思考ワークショップでは、参加者の方々からたくさんのアイデアや意見、気づきが生まれます。これらは多くの場合、ポストイットに書かれた短いフレーズであったり、模造紙にまとめられた共感マップやアイデアの構造であったり、ホワイトボードに描かれたシンプルな図解であったりと、アナログな形で蓄積されます。

これらの生のアウトプットは、ワークショップ中の熱量や思考プロセスを示す貴重な記録です。しかし、物理的な状態のままでは、参加者やクライアントとの共有が難しく、後工程での活用や、時間の経過に伴う紛失・劣化のリスクも伴います。

フリーランスの研修講師やコンサルタントとして、デザイン思考ワークショップをサービスとして提供するにあたり、これらのアナログなアウトプットをいかに効果的にデジタル化し、整理し、価値ある「成果物」として共有・活用できる形にするかは、プロフェッショナリズムを示す重要な要素となります。

この記事では、デザイン思考ワークショップで頻繁に用いられるアナログなアウトプットを、質の高いデジタル成果物に変えるための具体的な手法と整理のポイントについて解説します。

なぜアウトプットのデジタル化・整理が必要なのか

ワークショップで生まれたアウトプットをデジタル化・整理することには、いくつかの重要な目的があります。

ワークショップのアウトプットの種類とデジタル化の基本的な考え方

デザイン思考ワークショップでよく見られるアナログなアウトプットには、主に以下のような種類があります。それぞれに適したデジタル化の考え方があります。

  1. ポストイット(アイデア、インサイト、課題など):
    • 短いテキスト情報が大量に集約されています。
    • グループ分けや構造化(KJ法など)が行われている場合が多いです。
    • デジタル化の目的は、テキスト情報としての記録、カテゴリごとの集計、後工程での編集・並べ替えです。
  2. 模造紙/ホワイトボード(共感マップ、ペルソナ、ジャーニーマップ、ブレインストーミング結果、構造化された図など):
    • テキスト情報に加え、図、線、記号、参加者の手書きの味などが含まれます。
    • 情報の配置や関係性に意味があります。
    • デジタル化の目的は、全体像を捉えること、情報の構造を保持すること、視覚的な要素を含めて記録することです。
  3. 図解・スケッチ(プロトタイプのラフ、システムの概念図など):
    • 視覚的な情報や形状が中心です。
    • アイデアの骨子や機能、ユーザーとのインタラクションを示すために用いられます。
    • デジタル化の目的は、イメージを正確に伝えること、必要に応じて清書や詳細化のベースとすることです。

基本的なデジタル化の考え方は、これらのアウトプットが持つ「情報」と「構造/文脈」を、いかにしてデジタルデータとして正確かつ効率的に移行・保持するかという点にあります。

具体的なデジタル化手法の実践

アウトプットの種類に応じて、以下のようなデジタル化手法を組み合わせることを検討します。

1. 撮影によるデジタル化

最も手軽で迅速な方法です。模造紙全体や、ポストイットが集まったボードなどを撮影します。

2. テキスト化(文字起こし、データ入力)

ポストイットなどのテキスト情報を、デジタルな文字データに変換します。

3. 図解・構造のデジタル化

模造紙上の図解や構造、ブレインストーミングの配置などをデジタルで再現または清書します。

ワークショップアウトプットの整理と管理

デジタル化したアウトプットは、単にファイルとして保存するだけでなく、後から活用しやすいように整理・管理することが重要です。

共有と活用時の注意点

デジタル化したアウトプットを共有・活用する際には、いくつかの注意点があります。

まとめ

デザイン思考ワークショップで生まれたアナログなアウトプットのデジタル化と整理は、単なる記録作業ではなく、ワークショップの成果を最大限に引き出し、クライアントや参加者にとっての価値を高めるための重要なプロセスです。

撮影、テキスト化、図解のデジタル化といった具体的な手法を理解し、目的やアウトプットの種類に応じて適切に使い分けることで、ワークショップで生まれた熱量と深いインサイトを、共有・活用可能な価値あるデジタル資産へと変換することができます。

今回ご紹介した整理・管理の方法や共有時の注意点を踏まえ、ご自身のワークショップで実践してみてはいかがでしょうか。プロフェッショナルなアウトプット管理は、フリーランスとして信頼を得るための大きな一歩となるでしょう。