はじめてのデザイン思考ワークショップ

デザイン思考ワークショップを成功させるための事前準備と配布資料の作り方

Tags: デザイン思考, ワークショップ準備, 配布資料, ファシリテーション

デザイン思考ワークショップを企画・実行されるフリーランスの研修講師やコンサルタントの皆様にとって、ワークショップ本番の質はもちろんのこと、事前の準備がその成功を大きく左右します。特に、参加者への適切な働きかけと、理解促進のための配布資料は、ワークショップを円滑に進め、より深い学びとアウトプットを引き出すために非常に重要です。

ここでは、デザイン思考ワークショップを成功に導くための具体的な事前準備のステップと、参加者が価値を感じる配布資料の作成方法について詳しく解説します。

ワークショップ成功のための事前準備の重要性

ワークショップの事前準備は単なるタスクリストの消化ではありません。これは、参加者がワークショップの目的を理解し、安心して臨める環境を整え、主体的に参加するための基盤を作るプロセスです。事前の準備が不十分であると、参加者の間に混乱が生じたり、期待値がずれたり、ワークショップが想定通りに進まなかったりするリスクが高まります。

特に、デザイン思考という初めて触れる概念やプロセスを含むワークショップでは、参加者が事前に心構えを持つこと、必要な情報を得ておくことが、当日のエンゲージメントに直結します。

ワークショップ参加者への事前準備

参加者に対して行うべき事前準備には、以下のような項目が考えられます。

  1. 目的と概要の共有:

    • なぜこのワークショップに参加するのか、何を達成するのかを明確に伝えます。
    • デザイン思考の基本的な考え方や、ワークショップのプロセス全体の流れを簡単に説明します。
    • これにより、参加者はワークショップの意義を理解し、主体的に取り組む姿勢を持つことができます。

  2. 参加者への依頼事項:

    • ワークショップ中に使用するツール（例: オンラインホワイトボード、ビデオ会議ツール）の事前準備や動作確認を依頼します。
    • もし特定の情報（例: 担当している顧客像、抱えている課題）を事前に考えておいてほしい場合は、その内容と目的を具体的に伝えます。
    • オンライン実施の場合は、安定したインターネット環境、静かな場所の確保などを促します。

  3. 期待値の調整:

    • ワークショップで何が得られるのか、逆に何を期待すべきではないのかを正直に伝えます。例えば、「この短時間で完璧な解決策が見つかるわけではないが、新しい視点やアプローチを学ぶ機会である」といった説明は、参加者の現実的な期待値を形成するのに役立ちます。
    • 参加者からの質問を受け付ける機会を設けることも有効です。

これらのコミュニケーションは、メールや専用のコミュニケーションツール、または事前説明会を通じて行うことが考えられます。丁寧で明確な連絡を心がけましょう。

効果的な配布資料の作り方

配布資料は、ワークショップの内容を補完し、参加者の理解を助け、後で振り返るための重要なツールです。以下の点を考慮して作成します。

  1. 配布資料の目的を明確にする:

    • ワークショップ中に参照してもらうためか。
    • ワークショップ後の振り返りや実践に役立ててもらうためか。
    • ワークショップでカバーしきれない補足情報を提供するためか。
    • テンプレートやフレームワークを提供するためか。 目的によって、資料の構成や含めるべき内容が変わります。

  2. 含めるべき基本的な内容:

    • ワークショップのタイトル、日時、ファシリテーター情報
    • ワークショップ全体の流れ（アジェンダ）
    • デザイン思考プロセスの簡易的な説明やロードマップ
    • 各ワークの説明（目的、手順、時間配分）
    • 使用する主要なフレームワークやツールの説明（例: ペルソナ、ジャーニーマップ、アイデア発想手法など）
    • 参考情報や関連資料へのリンク（オンラインの場合）
    • 使用するテンプレートの例や空白のテンプレート（オンラインホワイトボードで作業する場合も、ローカル保存用として提供すると親切です）

  3. デザインと構成のポイント:

    • 視覚的な分かりやすさ: 図やイラストを効果的に使用し、文字ばかりにならないようにします。プロセス図などは特に視覚的に表現すると理解が進みます。
    • 簡潔さ: 情報過多にならないように、必要な情報に絞ります。各ワークの説明は、手順を箇条書きにするなど、短く分かりやすくまとめます。
    • 統一感: ワークショップ全体の流れと対応するように構成し、デザインにも一貫性を持たせます。
    • 参照のしやすさ: 目次をつける、重要な箇所をハイライトするなど、参加者がワークショップ中にすぐに参照したい情報を探しやすく工夫します。
    • 持ち帰りやすさ: 物理的な資料の場合はサイズや形態を考慮し、オンラインの場合はダウンロード・保存しやすい形式（PDFなど）で提供します。

  4. オンラインでの配布資料の注意点:

    • 画面共有で参照することも考慮し、文字サイズは大きめに設定します。
    • ファイル形式はPDFが一般的ですが、編集可能なテンプレートなどは別途提供することも検討します。
    • オンラインホワイトボード上で資料の一部として表示したり、リンクを貼り付けたりすることも可能です。
    • 事前に参加者が資料をダウンロードできるURLを共有しておくと、スムーズです。

事前準備と配布資料がもたらす効果

丁寧な事前準備と質の高い配布資料は、参加者のワークショップに対する心理的なハードルを下げ、前向きな姿勢を引き出します。また、ワークショップ中の疑問や混乱を減らし、ファシリテーターはより創造的な議論や深い洞察の引き出しに集中できるようになります。結果として、ワークショップ全体の生産性と参加者の満足度を高めることに繋がります。

フリーランスの研修講師・コンサルタントとして、これらの事前準備に時間をかけることは、自身の提供するサービスの質を高め、クライアントからの信頼を得るためにも非常に価値のある投資と言えるでしょう。

まとめ

デザイン思考ワークショップの成功は、当日のファシリテーションスキルだけでなく、周到な事前準備にかかっています。参加者への丁寧な働きかけを通じてワークショップの目的と期待値を共有し、分かりやすく実践的な配布資料を提供することで、参加者のエンゲージメントとワークショップの効果を最大化できます。

これらの準備は一見地味に思えるかもしれませんが、ワークショップ全体の成功を支える見えない基盤となります。ぜひ、次回のワークショップ企画からこれらのポイントを取り入れてみてください。