はじめてのデザイン思考ワークショップ クライアントと成果目標を設定し、結果につなげる設計ガイド
デザイン思考ワークショップをフリーランスのサービスとして提供される際、クライアントが最も関心を寄せるのは、「このワークショップを通じて、どのような成果が得られるのか」という点です。参加者の発想を広げたり、チームの創造性を高めたりすることも重要ですが、最終的にはクライアントのビジネス課題解決や目標達成に貢献できなければ、継続的な依頼や信頼構築は難しくなります。
この記事では、はじめてデザイン思考ワークショップを提供するフリーランスの講師・コンサルタントの皆様が、クライアントと効果的な成果目標を設定し、それを踏まえたワークショップ設計を行うための実践的なステップとポイントをご紹介します。
なぜクライアントとの成果目標設定が重要なのか
デザイン思考ワークショップは、プロセスそのものが価値を持つ側面もありますが、クライアントにとっては投資です。その投資対効果を明確にするためにも、事前の成果目標設定は不可欠です。
- クライアントの期待値との整合: 事前に具体的な成果目標を共有することで、クライアントの期待とワークショップで提供できる価値との間にずれが生じるのを防ぎます。
- ワークショップ設計の明確化: 目標が定まれば、どのような参加者を集め、どのフェーズに時間をかけ、どのようなアウトプットを目指すべきか、ワークショップの設計が明確になります。
- 成果測定の基盤: ワークショップ終了後の効果測定や振り返りの基準となります。これにより、提供した価値をクライアントに具体的に示すことが可能になります。
- 信頼関係の構築: クライアントのビジネス課題や目標達成に真摯に向き合う姿勢を示すことで、プロフェッショナルとしての信頼を得られます。
クライアントとの効果目標設定ステップ
クライアントとの最初のヒアリングや打ち合わせの段階で、以下のステップを踏んで具体的な成果目標を設定することを目指します。
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クライアントの現状課題と理想状態の理解:
- クライアントが現在どのような課題に直面しているのか、その背景には何があるのかを深く掘り下げて理解します。
- ワークショップを通じて、どのような状態になりたいのか、理想とする未来像を具体的に聞き出します。これは、単に「新しいアイデアがほしい」といった要望だけでなく、「〇〇の顧客満足度を△△%向上させたい」「社内の部署間連携を強化したい」といった、より具体的なビジネス目標に繋がるものであることが望ましいです。
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ワークショップで貢献できる範囲の特定:
- デザイン思考ワークショップが、クライアントの理想状態達成にどのように貢献できるかを明確にします。デザイン思考は万能ではありません。解決すべき課題が、デザイン思考のアプローチに適しているかを見極めることも重要です。
- ワークショップの期間、参加者のスキルレベル、予算といった制約の中で、現実的に達成可能な成果の範囲をクライアントとすり合わせます。
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具体的な成果目標の言語化:
- クライアントと共に、ワークショップ終了時に「どのような状態になっていれば成功とみなせるか」を具体的に言語化します。これは、計測可能な量的な目標(例: 「〇〇に関する新しいアイデアを△△件以上創出する」)である場合もあれば、質的な目標(例: 「参加者全員がデザイン思考の基本的な考え方を理解し、実践意欲を持つ」「特定の課題に対する関係者の共通認識を形成する」)である場合もあります。
- 目標は、SMART原則(Specific: 具体的に, Measurable: 計測可能に, Achievable: 達成可能に, Relevant: 関連性があり, Time-bound: 期限が明確に)を参考にすると、より明確になります。ただし、デザイン思考のアウトプット全てが厳密な量で計測できるわけではないため、質的な目標設定のスキルも重要です。
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成果目標達成に向けた役割分担の確認:
- ワークショップはあくまでプロセスの一部です。ワークショップで得られた成果(アイデア、プロトタイプなど)を、その後どのように活用し、最終的な成果に繋げるのか、クライアント側の体制や役割分担を確認します。ワークショップ後のフォローアップについても話し合うとより効果的です。
成果目標を反映したワークショップ設計のポイント
設定した成果目標は、ワークショップの設計全体に影響を与えます。
- フェーズの時間配分: どのような成果を目指すかによって、デザイン思考の各フェーズ(共感、定義、アイデア発想、プロトタイプ、テスト)に割くべき時間が変わります。例えば、現状理解や課題定義に重きを置く場合は共感・定義フェーズに、具体的な解決策の形でのアウトプットが重要な場合はプロトタイプ・テストフェーズに、より多くの時間を配分します。
- 使用するツールと手法: 特定の成果目標(例: 顧客インサイトの深化、多様なアイデアの創出、実行可能性の高いソリューション検討)に合わせて、効果的なツールやワークショップ手法を選択します。
- 参加者の構成と人数: 達成したい成果によって、どのような部門、役職、経験を持つ参加者が必要か、最適な人数は何名かを検討します。
- アウトプット形式: ワークショップで最終的にどのような形式の成果物(例: 定義された課題ステートメント、アイデアリスト、簡易プロトタイプ、テスト結果のレポート)を得たいかによって、ワークショップ中のアクティビティや記録方法を設計します。
- ファシリテーションの焦点: 成果目標を常に念頭に置き、議論が目的から逸れないように方向を修正したり、特定の成果に繋がるような問いかけを意識的に行ったりします。
まとめ
フリーランスとしてデザイン思考ワークショップを提供する上で、クライアントと具体的な成果目標を設定し、それをワークショップ設計に反映させることは、単にワークショップを成功させるだけでなく、提供するサービスの価値を高め、クライアントとの長期的な信頼関係を築く上で非常に重要です。
最初のうちは成果目標設定のプロセスに難しさを感じることもあるかもしれませんが、クライアントのビジネスに関心を寄せ、彼らの言葉に耳を傾けることから始めてください。そして、デザイン思考のアプローチがどのようにその課題解決に貢献できるかを、具体的かつ分かりやすく伝える努力を続けることが大切です。この記事が、皆様がクライアントと共に価値あるワークショップを創造するための一助となれば幸いです。